MQAとは、簡単に言うと、
1.録音時点で、現在までのアナログ音声のデジタル符号化の仕組み上避けられない音の立ち上がりなどの歪みをフィルタで処理する事で、クリアな音声を実現するよ。
2.音声データのうち人に聞こえない領域に、圧縮した高周波成分の差分データを埋め込む事で、WAVとして普通に再生できるデータとし、専用のデコーダーを通すと高周波成分が復元され、ハイレゾ音声になるよ。このため、mp3などのエンコードをしてしまうと、そのデータが消滅するので、flacなどの非可逆圧縮で扱う必要があるよ。
この2つの技術により、44.1kHz、16ビットのWAV、flacでハイレゾ音質と高音質を実現するという事である。
額面通りだと、A/D変換の歪みを軽減した上で、WAVとの互換性を保ちつつ、より高い周波数成分のデータを圧縮してWAVに格納してあり、対応するプレーヤーやDACを通すと復元してハイレゾになる、という事で、いい事しかないのであるが、正直理解が追いつかないと思われる。なんのこっちゃである。
やはり色々な意見があり、本当に原音に忠実なのかどうかはわからないという問題がある。
例えば、2のハイレゾデータの格納という部分について、384kHz、24ビットで録音されたマスターがあって、そこから96kHz、24ビットのflacにされたものと、MQAで44.1kHz、16ビットに変換され、それをデコードしてハイレゾ相当になったものとを比較して、どちらが原音に忠実なのかを検証したものが今のところ見当たらないのである。
また、1.のアナログ音声のデジタル符号化に伴う歪みをMQA独自のフィルタ処理で抑制して高音質化をするという部分については、もしこれが原音に忠実になる要素なのであれば、全てのアナログ→デジタル変換されたデータに適応できるように、フィルタの仕様が公開されていれば良いが、現状はMQAの権利を持つ団体が独占しているブラックボックスなため、1のフィルタだけを既存の音源に試す事が出来ないのである。もっとも、DTMのデジタルで作られた音楽と肉声などのアナログ由来の音声とが混ざっている音楽の場合や、すでに何かしらのフィルタがかけられている音源の場合、一律フィルタ処理されてしまうとデメリットも生じる事は想定されるので、難しいかなぁ、とは思います。素人考えですが。
そして、MQA対応機器にしかデコーダーが搭載されておらず、ソフトウェアのフルデコーダーが入手できないので、MQAデータを買っても、PCでデコードして例えば352.8kHzのflacに保存し直して、MQA非対応のプレーヤーでハイレゾ音声として聴くことができないのです。
という事で、MQA自体に賛否両論あります。
さて、本題に入ります。
MQA-CDというのが発売され、リッピングしたWAV、flacがMQA対応プレーヤーで手軽にハイレゾ再生出来るという発表があったので、ウォークマンをNW-A45に買い換えました。
しかし、MQA-CDのデータは普通にWAVとして再生されるだけでMQAという表示が出ませんでした。
ソニーに問い合わせを行なったのですが、サポートからの対応は、「(ウォークマン標準の取り込みソフトの)メディアセンターが、MQAのデコードに対応していないためハイレゾにはならない。CD2WAVも対応していないのではないか」というものであって、「MQAの説明をしているタワレコや音楽情報誌の記事と違う。ウォークマン側がMQA対応していれば、単純にリッピングされたWAVでMQAの差分の展開がされるという事ではないのか」と食い下がったものの、納得いく説明は得られなかったのが昨年の夏頃の話。
MQAのデータはMQA対応DACに光デジタルで流し込むだけでも検知して自動的に展開し、ハイレゾ化されて出力されるという内容だったのであるが、ウォークマンは違うのであろうか。
もしかして、ウォークマンはMQAで付与された折りたたみデータがあるかどうかは、メタタグで判断していて、それがないと動作しないのがウォークマンに内蔵のデコーダーなのか、と空想していたのですが、どうやらその通りだった模様で、MQA-CDからリッピングしたWAVやflacのファイルにMQAのメタタグを復元する(付与する?)というソフトが公開されて、めでたくMQA-CDがウォークマンでも本来の性能を発揮して再生出来るようになりました。
ただ、これ、単純にMQAというタグを付けているにしては、i7-4790Kでも一曲一曲処理時間が結構かかっているので、ファイルのデータにMQAでエンコードされた折りたたみデータが正しく存在しているかを一通り読んで精査してタグをつけているのかな、という印象です。リッピングしたWAVに単純にファイル名にMQAという文字を入れるだけでは認識しなかったし。
ソフトはこちら。
MQA TagRestorer
http://www.mqa.co.uk/customer/tag435sdf43te
説明文は以下の通り。
MQA-CDからリッピングした音楽ファイルは、MQAに対応するPCソフトやデジタル・オーディオ・プレーヤーなどでハイレゾ再生することができますが、一部の対応機種において、ファイルが正しくMQAとして認識されないという事象が発生しておりました。
これは、MQAストリームに埋め込まれたヘッダー情報がうまく生成されないために起こるもので、この問題を解決するため、MQA社は、ファイル名とヘッダーを簡単に変換できるアプリケーションを開発しました。
これを使えば、メーカーや機種を問わず、すべてのMQA対応機器においてハイレゾ再生が可能となります。
ファイル名に手作業で拡張子“.mqa”を追加する必要もありません。
下記、MQA社のHPにアクセスし、アプリケーションをダウンロードしてください。
http://www.mqa.co.uk/customer/tag435sdf43te
*日本語版はページの下部にございます。
*説明書も同梱されています。
*アプリケーションを使用する際はウインドウの幅を大きく広げてください。
変換の進行状況を確認することができます。
リンクがランダム英数字で、なにかのIDみたいにもみえますが、アフィリエイトじゃないのでご安心を。
このタグ付けソフトを実際に使ってみたところ、sonyのMedia centerで取り込んだflacよりも、ファイルサイズが3%ほど減少しています。
タグ付けだけじゃなく、flacからflacに再エンコードをしているのでしょうか。もとのflacファイルが圧縮度合いが最大じゃないからかもしれませんが、不思議な挙動です。
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もちろん、ハイレゾデータに展開されるわけではなく、普通に再生したらCD音質なのは変わりません。対応プレーヤーでMQAデコードがされるようになる下ごしらえです。
MQA対応ウォークマンでファイルを表示すると、サンプリングレートが。
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352.8kHzってあーた。
(352.8kHzのロスレス音質とは一言も言っていない。また、クオリティについての客観的な評価値は存在しない。おそらくマスターを取り込んでアップコンバートしたMQA変換前のデータが352.8kHzという事。どの程度の音質なのかはブラックボックス。)
ちなみに、MQA認識されるようになったタグ付け済みflacを再度xrecorderでflacファイルに変換したところ、見事にウォークマンではMQAと認識されないファイルになりました。容量はさらに1%ぐらい縮小。
これをもう一度タグ復元したらMQAと認識されたので、ウォークマンはこのMQA TagResotreを通す事が必須という事ですね。
MediaCenterのflac取り込みにこの機能内蔵しておいて欲しいです。
MQA自体に話は戻りますが、MQA-CDのハイレゾデータと、元々96kHzで売ってるハイレゾデータと、どっちが良いのか、MQAとして売られている192kHz flacはデコードされるとどういう音質になるのか、オリジナルのソースと比べる環境はないし、あっても自分の耳と頭ではそこまでの違いを聞き分ける聴覚があるとは思えないのであります。
mp3みたいに常時キュルキュルしたノイズが乗る、私でもこりゃ雑いとわかる圧縮方法でなければ、CDより細かな音の成分が含まれる(音声データの時間軸がよりアナログに近づく事により、アナログレコードよりCDが劣る部分と言われる部分が補われる)ので、良いのではないかと、個人的には思います。
しかし、MQAのフィルタとエンコーダが独占されていてよくわからないのが、評価が難しいポイントです。
元の音源をどこまで再現しているのかは保証されていなくて、ハイレゾ音声ですよ、高音質ですよ、という形なのがもやもやします。
最終的には収録から販売まで384kHz、24ビットみたいなリッチなデータで一貫して作られて、再生機器まで直接届くのがわかりやすいと思うのですけど、今のところCDより改善の方向に進んで行く分には進歩の一環だと思います。